圧縮機や圧縮機プラント、ガスタービン、ジェットエンジンなどにおいて発生するカタストロフ的現象であるサージを、軸流圧縮機を例にとって解説しました。サージは圧縮機の特性と流路の状況が流体力学的、振動学的、音響学的に結びついて発生する複雑な現象で、実際的・全体的に把握するのが難しい場合があります。このためサージに関してはこれまで原理的な解説が示されるのみにとどまっていました。本書ではサージ挙動のシミュレーションの初歩から解説し、著者の開発した計算コードによる多数のシミュレーション結果に基づき、サージ現象を支配する根本的パラメタを導き出し、それに基づいて、これまで明確にされていなかった挙動データ、サージ周波数、surge degeneration限界などの考え方とデータ図、そして様々な状況におけるサージの具体的現象の例を多数示し、サージの全貌が理解できるように構成されています。
本書は現場で活躍されている技術者の方々に具体的に参考になる内容です。現象的にも興味深いこの現象の研究書としても有益な内容を開発や研究に携わる方々に提供します。また、本書の示す具体的現象と学問的手法は、様々な流体現象を学ぼうとされている多くの若い方々にも大いに参考となるでしょう。
山口信行 著
B5判 200ページ
2021.2.28
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■目次■
前書き
序言
第1部 サージ現象
第1.1章 サージ事象と研究の背景
第1.2章 圧縮機サージ現象の例
1.2.1 サージ波形観察例
1.2.2 数値シミュレーション結果によるサージ挙動の理解
1.2.3 本章のまとめ
第2部 サージ現象と挙動の記述
第2-1章 サージの原理-藤井の研究-
2.1.1 1自由度のポンプ系
2.1.2 2自由度のポンプ系
2.1.3 余談
第2.2章 圧縮機系の集中要素サージ予測
2.2.1 Greitzerの考え方
2.2.2 サージ挙動例
2.2.3 GreitzerのBパラメタに関する検討
2.2.4 Greitzerモデルの展開(Wachter and Rohneの提案)
2.2.5 本章のまとめ
第2.3章 多段軸流圧縮機のサージ挙動解析のための数学的表現
2.3.1 圧縮機各段を考慮したサージ過渡的挙動の定式化
2.3.2 多段軸流圧縮機サージ挙動評価法(SRGTRAN)
第2.4章 SRGTRANの検証-閉ループにおけるサージ
2.4.1 試験装置の概要
2.4.2 サージ状況の実測データ
2.4.3 SRGTRANによるサージ挙動の予測
2.4.4 サージ周波数
2.4.5 本シミュレーションにおける問題点
2.4.6 本章のまとめ
第3部 サージ現象の基本パラメタとsurge degeneration
第3.1章 微小擾乱サージと振動伝播現象
3.1.1 単純化流路におけるサージ振動の不安定度
3.1.2 単純化流路における進行波としてのサージ状況
3.1.3 進行波関連量のsurge degeneration境界での挙動(Ms=0.1の場合)
3.1.4 一定断面積流路の式からのデータの一般化
3.1.5 吸込み流路マッハ数(Msによるデータの一般化
3.1.6 位相パラメタの意味の検討
3.1.7 粒子位相伝播パラメタΘ(μ/Mav)の意義
3.1.8 本章のまとめ
第3.2章 Degeneration境界流路平均無次元共鳴周波数
3.2.1 圧縮機サージ解析方法
3.2.2 単段圧縮機-流路系における流路平均無次元共鳴周波数
3.2.3 多段圧縮機-流路系における流路平均無次元共鳴周波数
3.2.4 Surge degeneration境界条件式の比較
3.2.5 本章のまとめ
第4部 サージ現象の全体像
第4.1章 サージ周波数
4.1.1 サージに関する根本的パラメタ
4.1.2 サージ周波数の挙動に対する段数の影響
4.1.3 全体的 fRs0avMt vs
4.1.4 サージ周波数の挙動に対する圧縮機位置の影響
4.1.5 Near-resonantサージとconvectiveサージ
4.1.6 圧力比の影響
4.1.7 サージ周波数の概略評価
4.1.8 多段圧縮機におけるサージ周波数パラメタfRs0avMtの挙動
4.1.9排出・充填型サージとしての無次元サージ周波数fRPVVS
4.1.10 fRPVVSパラメタによる多段機の挙動
4.1.11 不完全サージ回復現象の原因
4.1.12 多段圧縮機fRPVVS vs. fR1avMt特性領域
4.1.13 本章のまとめ
第4.2章 Surge degeneration境界
4.2.1 Surge degenerationの状況
4.2.2 Surge degeneration境界について
4.2.3 段特性の変化に対するサージ挙動のシミュレーション結果
4.2.4 吸込み流路長さの影響
4.2.5 サージ状態の経験的データとの対比
4.2.6 Surge degeneration境界パラメタのこれまでの提案式の対比
4.2.7 流路全長と共鳴波長の比とfR1avMtパラメタの関係
4.2.8 本章のまとめ
第4.3章 圧縮機の一般的サージ挙動傾向
4.3.1 単段圧縮機Comp11のサージ挙動
4.3.2 5段圧縮機Comp15のサージ状況
4.3.3 9段機Comp19の挙動傾向に関する検討
4.3.4 本章のまとめ
第4.4章 Degenerated surgeの挙動と回復
4.4.1 Deep surgeとdegenerated surgeの挙動
4.4.2 サージループにおける参考点
4.4.3 単段機Comp11の場合のサージ状況
4.4.4.5段機12000rpmの場合のサージ状況
4.4.5 Surge degeneration境界
4.4.6 Seriously-degenerated surge状態から回復の可能性について
4.4.7 本章のまとめ
第5部 圧縮機作動状態とサージ
第5.1章 多段圧縮機の回転数変化時サージ挙動
5.1.1 圧縮機回転数によるサージ・ループの変化
5.1.2 サージにおける圧縮機内部流動および作動状態
5.1.3 サージにおける内部流動状態等高線図
5.1.4 本章のまとめ
第5.2章 流路系における弁の位置のサージ挙動への影響
5.2.1 計算条件
5.2.2 管路と圧縮機の相対的配置の影響
5.2.3 本章のまとめ
第5.3章 サージにおける圧縮機内部作動状況詳細
5.3.1 9段圧縮機各段のstalling時作動状態
5.3.2 9段圧縮機内各段作動状況測定データ
5.3.3 Suter and Spaetiによるサージ点全段平均流量係数値
5.3.4 本章のまとめ
第5.4章 サージハンマー圧力
5.4.1 サージハンマー現象
5.4.2 サージハンマー圧力の伝播
5.4.3 サージハンマー圧力の大きさ
5.4.4 本章のまとめ
総括
記号
後書き
謝辞
著者略歴
山口 信行(やまぐち のぶゆき)
明星大学名誉教授、工学博士(東京大学)、ターボ機械協会名誉技術顧問
三菱重工業株式会社、研究開発エンジニア(1965-1994)、明星大学教授(1994-2011)
ターボ機械、特に軸流圧縮機の空気力学的開発と研究に従事
サージや失速現象にも関心を持って研究
その他のプラントや機器の流動現象についても研究を実施
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