S1907
■特集:複合材料の現在と未来
複合材料への注目は、自動車や工業製品を軽く強くしたいというニーズにより高まる一方です。加えて成形方法も著しい進化を遂げています。本特集では最新の複合材料と製造技術について紹介して頂きました。
○損傷許容性の向上を目指したCFRP/金属ハイブリッド複合材
/大阪市立大学/中谷隼人
CFRPに金属箔等を挿入した材料レベルでのマルチマテリアル化により、CFRP構造への金属材料による損傷抑制効果やエネルギ吸収能の付与を提案する。本稿では、CFRPのボルト接合部や面外衝撃負荷部の損傷挙動に及ぼす材料複合化の効果を紹介する。
○アクリル系表面改質剤を用いた透明アクリル/アルミナ複合フィルムの特徴
/名古屋工業大学/杉本英樹・高柳雄太
アクリル系および非重合性表面処理剤を用いてアルミナフィラーの表面改質を行い、得られた表面改質アルミナとアクリルモノマーを共重合することで複合フィルムの作製を行った。得られたフィルムは高い透明性(89%T)と低線膨張係数(22ppm/K)を示し、さらには半径0.4mmの円柱に巻取り可能であり、高い柔軟性を有していた。
○炭素繊維強化ポリアミド/ヒドロキシアパタイトナノ複合体の特徴と適用
/旭化成(株)/河村知世・園部健矢・大橋亜沙美・渡辺春美・渡邊克史・小山田洋・荒巻政昭/東京工業大学/扇澤敏明
ポリアミド(PA)とヒドロキシアパタイト(HAp)を”One-pot法”により同時合成し、PAと良好な界面接着性を有するHApをナノ分散した複合材料を作製した。合成挙動、構造と物性について紹介する。さらに炭素繊維強化したPA/HApナノ複合体を作製し、その特徴、特にクリープ特性について紹介する。
○CFRP/アルミニウム接合強化のための無機フィラー分散コンポジットコーティング剤
/(地独)東京都立産業技術研究センター/小野澤明良
無機フィラー分散コンポジットコーティング剤を用いたCFRP/アルミニウムの接合強度は、コーティング剤なしの接着強度と比べ、一次付着性は20%増、長期耐久性試験(冷熱衝撃試験)後の二次付着性は130%増の強度が得られたことから、コーティング処理の有効性を見いだすことができた。
○竹/ポリ乳酸/ポリビニルアルコールの複合化とその特徴
/(地独)鳥取県産業技術センター/村田拓哉・山本智昭・吉田晋一
竹粉とポリ乳酸を複合化させ、その特徴を調査した。12ヶ月の埋設試験では、竹粉を50phr添加した場合、重量が約16%低下し、さらに、引張強さも約60%低下した。また、竹粉の添加による試料内部への吸水効果が示唆され、竹粉の添加がポリ乳酸の分解に有効であることが分かった。
○ゴムと炭素繊維の複合材の開発
/(株)ハリガイ工業/遊佐孝彦・吾妻 満
当社が開発した、ゴムと炭素繊維の複合材『CFR』の概要・特徴について説明する。CFRはまだ世の中には存在していないが、ゴムのしなやかさと炭素繊維の強度を両立した新たな素材である。特に工業分野で社会貢献できるものと考えている。
○単軸往復動スクリュー型混練機による複合材料製造の優位性
/(株)ブッス・ジャパン/平井和彦
単軸往復動スクリュー型混練機は、そのユニークな技術により温度や剪断に敏感な材料の混練には抜群の性能を発揮するため、高充填強化プラスチックの製造装置として優れた選択肢となっている。本稿ではその特徴を紹介する。
○原子レベル理論解析による高分子複合化のための特性発掘
/関西大学/齋藤賢一
新材料やその複合化のため、原子・分子レベルの数値シミュレーション(主に分子動力学法)を実施し、未知の特性を発掘する手法を述べる。これは微視的な構造変化や機能性の発現機構を理解をしつつ、材料選択にも応用できる。応用例としてセルロースナノファイバーの解析を紹介する。
■特設記事:自己修復材料の現況
環境問題を背景に、傷を自ら修復できる材料へ熱い視線が注がれています。本特集では、自己修復性に他機能を備え、多方面での適用が期待される材料について紹介して頂きました。
○新たな分子設計による自己修復材料の実現
/大阪大学/大﨑基史・髙島義徳・原田 明
高分子材料の強度を向上させると固く脆くなってしまう。この問題の解決策として、損傷を受けても材料が損傷を自然に回復する自己修復材料が注目されている。本稿では、自己修復性を中心に高分子材料の強靭化について近年の成果を解説する。
○さまざまな環境で自己修復する機能性ポリマーの特徴と事例
/理化学研究所/西浦正芳・侯 召民
希土類金属触媒を用いることにより、アニシルプロピレンとエチレンとの精密共重合を達成し、乾燥空気中のみならず、水や酸、アルカリ性水溶液中でも自己修復性能や形状記憶性能を示す新しい機能性ポリマーの創製に成功した。
○自己修復機能を発現する繊維強化高分子材料の開発動向
/富山県立大学/真田和昭
FRP廃棄物排出低減に向け、FRP自体に損傷を修復する機能を付与して、長期信頼性を確保しようとする研究開発が近年活発である。ここでは、自己修復機能を発現するFRPの開発動向を紹介する。
○薄膜化が可能な透明自己修復材の特徴と事例
/(株)KRI/山路奈々
本自己修復材は自己修復後も高い靱性を有しており、安価なアクリル酸モノマー、金属塩を出発原料にして得ることができる。また自己修復後も透明性に優れており、薄膜後の鉛筆硬度試験において2Hの硬さを有する薄膜を形成することができる。
■連載
○大自然を科楽する 第39回
/青野哲士
○しなやかタフポリマーへの取り組み 第1回
/東京大学/伊藤耕三
○プラスチック成形における不安定流動の制御 第70回
/藤山ポリマーリサーチ/藤山光美
○成形材料の溶融安定性とリサイクル 第4回(最終回)
/(元)アモコ・パフォーマンス・プロダクツ/安永茂樹
○これ、プラスチックで作りました 第27回
/(株)マルテー大塚/法木達成
○助っ人工業デザイナーの独り言 第54回
/(株)H&Adesigners/鈴木英夫
○世界のバイオプラスチックは今 第19回
/ITIコンサルタント事務所/猪股 勲
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