OA1506
■特集:励起状態を見つめる 1
○ラジカル開始剤のカプセル化
/東京工業大学/山科雅裕・吉沢道人
光遮蔽効果を有する分子カプセルは、内包した分子に光安定性を付与するため、幅広い基質適応性が見込めるとともに、将来的には種々の高活性化合物の汎用的な安定化剤としての利用に繋がることが期待される。本稿では、この分子カプセル1の、1)高い分子内包能とアントラセン骨格による 2)光遮蔽効果および 3)空間圧縮効果を活用したAIBNおよびその誘導体の安定化とその利用例について、最近の成果を紹介する。
○被覆型白金アセチリドポリマーの固体燐光発光
/京都大学/正井宏・辻康之・寺尾潤
被覆型白金アセチリドポリマーの主鎖骨格の熱運動と外部環境を合成化学的に制御することで、燐光量子収率の向上が可能となる。本稿では、環状分子を用いてポリマー主鎖を三次元的に被覆することで得られる環状被覆効果について、筆者らの研究結果を紹介する。
○光照射によるスピン転移/筑波大学/所裕子/東京大学/大越慎一
光誘起相転移にもとづく光磁性現象は、学術的にも産業的にも大変興味深い現象である。我々はこれまでに、双安定性を示す集積型金属錯体磁性体などを化学的に合成し、様々な光磁性現象を報告してきた。その中でも本稿では光スピン転移に焦点をあて、光電荷移動型スピン転移現象を示すCoW系オクタシアノ光磁性材料および光スピン転移現象を示すFeNb系オクタシアノ光磁性材料について紹介する。
○放射光X線を用いた励起状態の観測/物質構造科学研究所/足立伸一
溶液中や固体表面などにおける励起状態の物質構造を直接観測するための手法として、放射光X線のパルス特性を用いた時間分解X線構造解析法が実現しつつある。本稿では、放射光X線による「分子の動画」実現に向けた研究の現状について紹介する。
○SAC/SAC-CIi法による励起スペクトルの研究例
/(特非)量子化学研究協会/中辻博・宮原友夫
SAC(Symmetry adapted cluster)法が基底状態を、SAC-CI(configuration interaction)法が励起状態やイオン化状態などを計算するための理論として、筆者である中辻博が1978年に提案した。本稿では、このSAC/SAC-CI法を励起スペクトルやイオン化スペクトルに応用した例を中心に紹介する。
■解説
○レーザーが切り拓く最新の大腸内視鏡観察法
/京都府立医科大学/吉田直久・内藤裕二・稲田裕・小木曽聖・鹿瀬亮平・伊藤義人
/朝日大学歯学部附属村上記念病院/八木信明
消化器内視鏡として初めてレーザー光源を用いた内視鏡システムLASEREO(富士フイルム社)が2012年に開発された。410nmと450nmの波長を有する2つのレーザーを用い狭帯域光観察であるBlue Laser Imaging(BLI)を行うことができ鮮明な内視鏡画像による診断能の向上が期待される。
○精神医学にオプトジェネティクスが期待されること
/慶臆義塾大学/田中謙二
オプトジェネティクスは神経細胞の活動を自由自在に操作することを可能にする革新技術である。前半では、なぜこの技術が革新的なのか歴史から考えてみる。後半は精神医学に応用する上での限界と期待について私見を述べる。
○歯科領域におけるレーザーと痛みの緩和について
/鶴見大学短期大学部/小林一行
歯科領域において組織透過型のレーザー照射は、表面麻酔、口内炎や象牙質知覚過敏症の疼痛緩和、ラバーダム装着時の疼痛緩和、有病者の失活抜髄処置、歯周外科処置後の疼痛緩和、矯正治療における疼痛緩和に有効である。本稿では、その効果や作用機序について解説する。
■研究室紹介
○横浜国立大学 荒川研究室/横浜国立大学/荒川太郎
■製品ガイド
○レーザー加工機
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