/日本工業出版(株)/

■特集:光による診断と治療
○光線力学療法で感染症を撃退
/防衛医科大学校/守本祐司・木下学/陸上自衛隊/田中優砂光
/Massachusetts General Hospital/Michael R Hamblin
光線力学療法(PDT)の抗菌効果は、従来説(光化学反応による直接的殺菌)とは異なり、PDTによって活性化された白血球(好中球)が細菌を貪食することに因ることが最近明らかにされた。

○レーザー医療におけるTissue Opticsの重要性
/大阪大学/粟津邦男・本多典広
光を用いた診断・治療において生体組織内の光伝搬を理解することは非常に重要である。組織での光の吸収、および散乱の度合いを物理定数として数値化した光学特性について説明する。さらに、組織中での光の伝搬を、光と吸収物質、および散乱媒質との相互作用という観点から考察する。

○婦人科領域ガイドラインとレーザ医療
/杏雲堂病院/坂本優・嘉屋隆介・三宅清彦・茂木真・田中忠夫
/東京慈恵医科大学/岡本愛光
子宮頸部初期病変の子宮温存治療法は円錐切除術が標準であるが早産等の産科的リスクの有意な増加が報告されている。一方、光線力学療法(PDT)は腫瘍親和性光感受性物質投与後、病変部へのレーザ照射により生ずる光化学作用による腫瘍特異的治療可能な優れた方法である。我々は子宮頸部初期病変に対して妊孕性温存可能なPDTのプロトコルを開発、臨床応用してきた。今回、本稿では、婦人科領域レーザ医療、とくに、子宮頸部異形成〜初期癌に対するP D Tのガイドラインについて解説する。

○Er:YAG Fractional Laserによる瘢痕治療/厚木市立病院/岸陽子
Er:YAG Fractional Laserのコラーゲン産生機序を利用することにより瘢痕における色調、性状、形態の改善が可能であることを述べる。

■解説
○高性能高機能の光触媒の開発と口蹄疫の抗菌脱臭対策
/(株)エコプライズ/垰田博史
昨年、韓国で348万頭もの家畜が口蹄疫に感染し、韓国各地の4,600ヶ所以上に埋設され、その腐敗臭が深刻な問題となった。その解決のため韓国高陽市長の要請により可視光で働く高性能・高機能の光触媒を用いて抗菌脱臭対策を行い、優れた効果が得られ、感謝状を贈られた。

○スキャナーを使用した各種レーザ加工/前田工業(株)/鳥越功
レーザ加工において、今後の応用が期待されるスキャナー加工について、加工事例を紹介するとともに、現状の課題など留意すべき点にも触れる。

○産業分野におけるデータ通信および制御ネットワークにおける
光ファイバリンクと銅リンクの適切な選択について
/アバゴ・テクノロジー(株)/マーカス・ワイヤシング
本稿では、ガルバニック絶縁、同相ノイズ耐性、電磁干渉耐性、使いやすさといった側面から、光ファイバ・リンクの優位性について説明する。そのうえで、コスト面でも、光ファイバ・リンクが銅リンクに対して十分な競争力をもつことを明らかにする。

○光修復性を有する微粒子/液晶複合ゲル材料
/(独)産業技術総合研究所/山本貴広・吉田勝
製品等の耐久性向上や長寿命化への貢献を目的として、ゲルを用いた自己修復材料の開発が進められている。本稿では、微粒子/液晶複合材料に発現するゲル状態に着目し、アゾベンゼン色素の光異性化反応を利用したゲル-ゾル制御と光損傷修復について紹介する。

○ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の現状と将来への展望
/筑波大学/中井啓・松村明
近年のホウ素中性子捕捉療法の現状と展望について概説した。治験を目前にした、医療への発展が期待される治療法であるが、中性子線源を、原子炉から加速器へ転換が必要であること、さらに患部へ効率よく集積するホウ素化合物の開発が必要である。

○金属/誘電体多層膜(MIM構造)による機能性・光フィルタ
/大阪大学/押鐘寧/(独)産業技術総合研究所/村井健介
拡大する白色LED照明環境に呼応して、高速可視光通信を実現するために、発光スペクトルの一部を高速に制御できる、金属/誘電体多層膜構造からなる反射型アクティブフィルタ(プラズモニック波長フィルタ)の研究開発を行っている。

○青色蛍光を発する分子カプセル/東京工業大学/李稚鴎・吉沢道人
ユニークな機能を有する発光性材料の開発が注目されている。我々は最近、発光性化合物の「立体構造」に着目して、合成が簡便で安定性の高い発光性分子カプセルの構築を達成した。本稿では、その分子カプセルの設計と合成、光物性について紹介する。

■製品紹介
○希土類不使用型新規蛍光体/レンゴー(株)/杉山公寿
○マイクロレンズ付ニポウディスク方式による
広視野高速レーザ共焦点スキャナ/横河電機(株)/東拓哉