■特集:不法投棄対策と環境再生の現状
○不法投棄現場の環境再生について/北海道大学/石井 一英・古市 徹
産業廃棄物の不法投棄が、循環型社会形成を阻害する大きな社会問題となっている。特に、豊島や青森・岩手県境等の大規模事案では、特別措置法により国税が投入され修復作業が今も行われている。「環境再生」という言葉は一般にこのような不法投棄現場の修復後の土地利用を示していると考えられているが、本報告では環境再生を不法投棄対策全体からとらえ直し、環境再生の定義や考え方を再整理する。そしてその必要性や課題について述べることにする。
○青森県・岩手県境不法投棄事案に対する青森県の取り組み/青森県環境生活部/山田俊行
青森県田子町から車で約30分、岩手県二戸市にまたがる原野に産業廃棄物処理業者である三栄化学工業(株)と縣南衛生(株)が共謀し、長年にわたって不法投棄を続けていた。不法投棄廃棄物は最大20mに及ぶ深さまで傾斜地形をほぼ埋め尽くし、地表面は大半が覆土で覆われていた。平成11年に岩手・青森両県警察合同捜査本部が強制捜査を行い、その後、本県では全容を解明し、原状回復対策を講ずるため、汚染実態調査を実施した…。
○岩手県県境不法投棄事案について/岩手県環境生活部
不法投棄現場の環境再生は行為者が当然その責を負うべきものであるが、生活環境への支障を防止するために速やかに対応する必要があったことと、当事者に資力がないことなどからやむを得ず県が基本方針の下に行政代執行により実施した。その後、「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法」が制定され、国の財政支援が制度化されたことから、これに基づく実施計画を策定し、環境大臣の同意を得て原状回復事業を進めている。
○山梨県日向処分場の適正化について/大成建設/升本俊也
本事業は、弊社が平成16年10月〜平成17年8月にかけて施工した、不適正な処分場の適正化事業である。当社は施工を行った立場であるが、事業の経緯、概要、施工についてまとめて記述させていただく。本事案は、日向処分場の埋立廃棄物の飛散・流出・崩落による、生活環境保全上の支障の除去を目的とした、山梨県の代執行事業で、豊島、青森、岩手事案に次ぐ4番目の「特定産業廃棄物に起因する支障の除去などに関する特別措置法」による補助事業である。対策工事・工法の策定に当たっては、一般的な全量撤去・搬出ではなく工事に使用する資材などを可能な限り現地発生材を利用することによって合理的な工法を検討した。
■特集:リサイクルは今
○プラスチック製容器包装再商品化の動向/日本容器包装リサイクル協会/浅川 薫
当協会は容器包装リサイクル法に基づく指定法人として、ガラスびん、紙製容器、PETボトル、およびプラスチック製容器包装の再商品化を実施している。協会が各素材別に市町村から引き取った量を図にすると、プラスチックが非常に高い数値となる。その結果、協会が再商品化事業者に依頼して支払う委託料も総額の約97%をプラスチックが占めるに至る。そこで本稿ではプラスチック製容器包装の再商品化に関する特徴・課題などについて概観することとする。
○パソコンリサイクルの現状と課題/パソコン3R推進協会/海野 隆
2001年4月に施行された「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」において、パソコンは指定再資源化製品の一つとされ、製造または輸入販売する事業者に回収・再資源化の責務が課せられた。現在のパソコンリサイクルは、これに基づいて実施されている。その根拠法が資源有効利用促進法であることからもわかるように、パソコンリサイクルの目的はまずそこに使われている金属を中心とした資源の有効活用にある。資源の有効活用は、その反面において「ごみ」の減量化という効果を副次的に生じさせる。
○飲料容器回収サービス最前線/エンビプコ・ジャパン/圓子 雄
1995年6月に「容器包装に係わる分別収集および再商品化の促進等に関する法律」が公布され2000年4月からは、対象となる品目も拡張され、完全施行されている。このような国の動きに伴って、消費者もごみに対する意識が変わってきた。また、昨年の秋以降、資源市場の大幅な悪化により、再生事業者が窮地に立たされている。そうした背景のなか、容器の回収から再生までの安定した継続的なトータルシステムが求められている。その有力候補として飲料容器回収機を利用したリサイクルシステムが注目を集めている。本稿では「住民参加型の地域貢献リサイクルシステム」を紹介する。
○プラスチック製容器包装の油化リサイクル/札幌プラスチックリサイクル/福島正明・若井慶治/東芝/伊部英紀
当社は容リ法の完全施行に合わせて平成12年度、札幌市リサイクル団地内に建設した廃プラ油化処理施設の運転を開始し、今年で10年目を迎える。運転当初、廃プラに混入していたPET(ポリエチレンテレフタレート)の熱分解後の油再生プロセスに発生する有機酸に起因する腐食および閉塞の運転障害も克服し、PVCとPETが混入した廃プラも油化処理できることを実証した。ここ数年は容リ法の運用の変化などの社会システムに対する課題が生じており、多様な再商品化手法の適用に向けて札幌市とモデル事業を奨めている。そこでPVCとPETを含む混合廃プラ油化リサイクルについての現状と課題を報告する。
■製品技術
○新技術・超臨界水酸化方式による全有機炭素(TOC)分析計/セントラル科学/松永広助
■講座
○膜分離技術 1 膜技術の分類と特徴/T.Tech.Office/田村真紀夫
■連載
○汚泥の処理・3Rに関するQ&A 11
現場における課題と対策 6 その1/名取 眞
○消えゆくアラル海を追いかけて 9
3つの祖国を持つ友人との出会い/京都学園大学/石田 紀郎
■コラム
○太陽光発電の将来性/山口真奈美
○地球温暖化に関する素人の考察/HST
■News & Products