実時間全焦点顕微鏡カメラ開発
産業技術総合研究所 大場光太郎
近年,マイクロおよびナノテクノロジへの産業的な興味が高まり,微細な環境を観測する装置や、微細な環境を観測しながら作業をするシステムの需要が高くなっている.観測装置として代表的なものは,光学顕微鏡,電子顕微鏡などが上げられる.中でも,光学的な限界を超えないマイクロサイズの対象物を簡便に観測するためには,光学顕微鏡が広く使われている.
現在,マイクロサイズで大きな市場を持つと期待されるものとして,生体用途としては,光学顕微鏡画像を覗きながらの細胞やDNA操作等がある. また,工業用途としては,LSI製品検査における,ワイヤーボンディングされたチップ表面とボンディング面を同時に観測・検査したいという要望等がある.

しかしながら顕微鏡画像の様に被写体深度が浅い光学系では, ある奥行きの物体に焦点を合わせると,異なる奥行きにある物体に焦点が合わないことから,異なる焦点距離で何枚かの画像を取り,画像処理を使って製品検査しているという例が多く見受けられる. 

そこで我々は,焦点距離を高速に動かし,異なる焦点距離での複数枚の画像を高速撮像,さらに高速画像処理することにより,実時間で視野全部にいつもピントが合っている(全焦点画像)と,同時に物体の奥行きデータを獲得する実時間「全焦点顕微鏡カメラ」の試作を行っている5)6)7).観察者は顕微鏡画像の替わりにコンピュータ内で三次元データと全焦点画像を再構成したVR表示を見ながらオペレーションすることが可能となり,物体を見たい視点位置から自由に観測することが出来る.本編では,理論とシステムを紹介している.
(全原稿は画像ラボ2003年11月号にて掲載)


第1図 Depth from Focus理論
第2図 試作1号機
第3図 可変焦点レンズ概観
第4図 可変焦点レンズ構成
第5図 可変焦点レンズ動作原理
第6図 全焦点画像の生成概念図
第7図 VR表示例
第8図 試作二号機ブロックダイアグラム
第9図 試作二号機概観
第10図 試作二号機出力例
第11図 顕微鏡システム概観図
第12図 典型的な顕微鏡画像例
第13図 全焦点顕微鏡画像例(動画)
第14図 製品版システム概観図
第15図 製品版画像出力例

参考文献
1)石原満宏, 吉澤徹, “最近の光表面形状計測技術”,O plus E, Vol.20, No.11, 1998, pp.1251-1258.
2)Shree K.Nayer and Yasuo Nakagawa,“Shape from Focus”,IEEE Trans. on PAMI, Vol.16, No.8, 1994, pp.824-831.
3)児玉和也, 大西隆之, 相澤清晴, 羽鳥光俊, “反復法に基づく複数画像からの任意焦点画像の生成”, 映像情報メディア学会誌, Vol.51, No.12, 1997, pp.2072-2081.
4)金子卓, 多矢信之, 川原伸章, 秋田成行, 服部正,“可変焦点レンズを用いた長焦点深度視覚機構”,電気学会マイクロマシン研究会, 1997.
5)大場光太郎,Jesus Carlos Pedraza Ortega, 谷江和雄,林学明,段木亮一,武井由智,金子卓,川原伸章,“実時間マイクロVRカメラの試作”,電気学会論文誌E,Vol.120−E,No.6, 2000, pp.264-271.
6)K.Ohba, J.C.P.Ortega, K.Tanie, G.Rin, R.Dangi, Y.Takei, T.Kaneko, and N.Kawahara, “Micro-observation technique for tele-micro-operation”, Advanced Robotics, Vol.15, No.8, 2001, pp.781-789.
7)大場光太郎,“実時間全焦点顕微鏡カメラシステム”,日本ロボット学会誌,Vol.21, No.1, 2003, pp.43-44.